2015年9月12日土曜日

都市研2015年7月例会感想



誰もが生活困窮者になってもおかしくない時代に
                                   T.    M. 

 
 都市研7月例会では、平井恭順(ひらいやすゆき)(川崎市健康福祉局生活保護・自立支援室係長)をお呼びし、「生活困窮者自立支援事業の現状と課題~だいJOBセンターの取り組みからみえてくるもの~」をテーマに、お話を伺いました。

.例会概要

概要としては、①川崎市の概要(位置、概要、特徴)②相談の状況(体制、相談者、相談経路、相談者の支援類型)③就労支援の状況(段階に合わせた就労支援、しごと応援事業、職場見学・求人開拓、中間的就労の活用、福祉就労の活用、その他)④就労支援の効果(就労状況と効果、効果比較)⑤支援における川崎市の工夫⑥だいJOBセンターの取り組み事例紹介が主な内容でした。

2.市の取り組み

川崎市では、生活困窮者自立支援事業について、紆余曲折はあったものの、生活困窮者自立支援法が平成25年12月に公布された時期と同時にだいJOBセンターの立ち上げも行われています。

.生活困窮者自立支援法とは

生活困窮者自立支援法については、①枠は作ったがあとは自治体で考えてくれといった法律で各自治体とも手探り状態であること②生活保護法は受給者に義務を課すところがあるが、生活困窮者自立支援法は本人が「いやだ!!」と言ったらできない難しさがあるとのこと。

.事業の内容 と課題

生活困窮者自立支援事業には、必須事業(自立相談支援事業、住居確保給付金支給)と任意事業(就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業)があるが、①例えば就労準備支援事業で3ヶ月就労準備をしても給与が出ないなど、明日の生活をどうするか迫られている生活困窮者のニーズとあっていない。 ②学習支援については、国から10/10の補助を受け、これまで生活保護受給者に行っていたが、法施行により、対象者が生活困窮者に広げることができるようになり、国費が1/2になってしまった。③就労訓練事業→職場体験(いわいる「中間就労」)については、民間事業者の自主事業とされ、事業者がボランティア等の職をつくっても、助成がないことから、制度としても課題を抱えているという指摘もありました。

.だいJOBセンターの事業

①だいJOBセンターは、川崎区にあり、面接3名、精神保健2名、就労支援5名、居住生活支援2名と法律相談等専門相談の体制で行っていること。(事業は民間事業者に委託)②だいJOBセンターでは、近隣の方と喧嘩をしたといった話も伺っている③一方、他に専門の相談機関がある場合はそちらへ繋げている④だいJOBセンターはセンター型のため、より専門的な相談に対応できる(同行支援も可能)とのことでした。

6.事業を行って見えてきたこと

①相談者の年代別特徴としては、1)10~20代―学校で何かがあって不登校になった人 2)30代―鬱病を背負って辞めた人、就職氷河期にアルバイトで働き、そのままアルバイトの人 3)40代―親の介護で辞める人、離婚 4)50代―親の介護、肉体労働で身体を壊した人 5)60代~70代―年金がもらえない・足りない人、夫婦等で死別してしまった人などの特徴があること

.支援対象の明確化

だいJOBセンターでは、受けた相談の内容を分類化し、適切な機関に繋ぐとともに、センターで継続支援を行う必要のある人を抽出し、支援期間とアフターケアの目安の期間を定めて支援を行っているとのことでした。

.高齢者の就労の場の開発

就労支援では、60歳以上の人のハローワークでの就職率が低いことから、「60歳からの仕事応援事業」をセンターが就労先を開拓する形で行っているとのこと。企業側の心理を読み、マッチングすることで、60歳以上の方の6割がこの事業で就労しているとのことでした。

.誰もがなり得る時代に

気になるのは、就労支援の効果でしょうか。川崎市でもどう効果を見せていくか苦労されているようです。昨年、都市研例会にお呼びした藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表)さんが、今年6月に「下流老人~一億総老後崩壊の衝撃」(朝日新書)という本を出版されました。この類の本としては、10万部近く売れるというベストセラーに。「下流老人」が流行語になるのではないかとも・・・。この本と重ね合わせると、非正規労働者が3分の1を超え、また年金額のみでは生活が成り立たないといった今の時代背景からは、何か家族内に複数の問題を同時に抱え込んでしまうと誰でもが生活困窮者になりかねない時代に直面しているのだと改めて実感しました

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