2018年1月21日日曜日

現代都市政策研究会9月例会感想


「合意形成の意義と限界‐大規模開発を事例として‐」を聞いて

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 中央大学の礒崎先生の講演について、室地さんがまとめを報告していただいていますので、私は、自身の感想を述べたいと思います。

 国の議会において、多数派与党による乱暴な議会運営が問題となっています。そもそも、議会制民主主義においても、意見の異なる者同士が十分な時間をかけて理性的に討議し、意見がどうしても一致しない場合に多数決を行うといった「熟議」による意思決定が望まれます。しかし、安全保障や集団的自衛権といった国政における重要課題や共謀罪といった基本的人権にかかわる問題についても、十分な審議が行われず、結果として国民の十分な理解が伴わないまま法案が可決されるという事態が起こっています。そのような状況において、「合意形成」に関する様々な課題について議論が深められることは意義深いものであると考えます。

 礒崎先生からは、「合意形成の5W1H」といった考え方が示されました。特に、なぜ合意形成が必要なのかということについて掘り下げられる必要があります。多数決により決定された政策と、熟議の過程を経て決定された政策とでは、その合意の「質」は異なるのかということに関心があります。理性的な討議を重ねる中でよりよい答え=政策に近づくことができるのであれば、「合意形成」の重要性がたかまるでしょう。

 さらに、どのように合意形成をするかということについても、さまざまな手法・方法論が研究され実践される必要があると考えます。参加の手法・技法が工夫されることが望まれます。

 礒崎先生からは、特に、大規模開発における合意形成についても報告されました。「受益圏」と「受苦圏」が分裂し、対立する中でどのように合意を形成するかということについては、なかなか解決策は見出すことができません。最終的には、司法による解決に委ねることにもなりますが、そもそも、開発者側や行政側と住民との間において、ボタンの掛け違えが原因で対立が深刻化することも多々ありました。それらを未然に防止するという観点からも、合意形成の手続や手法を検証していきより良い解決策を見出す努力が必要と感じました。

 さらに、合意形成も、住民相互の合意や行政と住民との間の合意といったレベルから、政府間の合意ということも提起され、「地域環境管理権」や「自治体・コミュニティの同意権」といったことも示されました。沖縄米軍基地の辺野古移設問題の事例においては、国と自治体の間で、「国地方係争処理委員会」や裁判手続も繰り返されていますが、いまだ解決には至っていません。このことを「合意形成論」で整理していく試みですがさらなる研究と解決に向けた努力が望まれます。

 「合意形成」に関する研究は、人は、「熟議」による理性的なやりとりにより、人は、よりよい答えに近づくことができるということを信じることにより、民主主義をさらに進化させることができると考えます。

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