2018年4月15日日曜日

現代都市政策研究会2018年1月例会感想


弁護士のイメージが大きく変わる例会でした
         T.           M.

.例会概要

長谷川弁護士からは、主に、(1)司法ソーシャルワークとは(4)今後の課題について、飯田弁護士からは(2)東京パブリック法律事務所の活動(3)司法ソーシャルワークの具体的事例についてお話を伺いました。

.司法ソーシャルワークとは

(1)司法ソーシャルワークの定義

長谷川弁護士から司法ソーシャルワークとは何かというお話がありました。

まず、「司法ソーシャルワーク」について、厚生労働省や法テラス(日本司法支援センター)における定義が紹介されましたが、何を言っているのか難しいとのことから、どのような人が行っている活動なのか、どのような目的でおこなっているのか、どのような活動をしているのかの3つに分解して説明していただきました。

(2)どのような人が行っているか~「都市型公設事務所」から「法テラス」へ

そもそも「司法ソーシャルワーク」の活動は、長谷川、飯田両弁護士が所属している東京パブリック法律事務所(後にも出てきますが、東京パブリック法律事務所は東京弁護士会が市民の法的駆け込み寺を目指して、2002年6月に設立された「都市型公設事務所」)に所属していた太田、谷口弁護士(お2人とも2006年に「法テラス」が設立された際のスタッフ弁護士の第1期生とのことでした)の活動から始まっているとのことでした。

この活動が、2004年の総合法律支援法に基づき設立された公的な法人「法テラス」(日本司法支援センター)の設立につながっているとのことです。

「法テラス」は法による紛争解決のための制度を利用しやすくすること法的サービスを身近にするための体制を整備すること法による紛争解決に必要な情報やサービスを提供することを目的に国費により設立された法人です。

「法テラス」で出会う弁護士には、2つの弁護士がいます。一つは外部の事務所と「法テラス」が契約して「法テラス」が提供している制度を利用して、法的サービスを提供する一般契約弁護士。もう一つが、「法テラス」に勤務し、「法テラス」が設置した事務所に所属して、法テラスの制度が利用できる方(資力のない方)を対象に、法的サービスを提供しているスタッフ弁護士です。スタッフ弁護士は、司法ソーシャルワーク行うために設置されたものであり、全国でスタッフ弁護士は200名いるとのことでした。

(3)どのような目的で行われているか~司法アクセスの改善

目的は司法アクセスの改善。つまり司法サービスに辿りやすくすることです。

(4)どのような活動をしているのか~「壁」を取り除く

司法アクセスを改善するにはアクセスするために立ちはだかる「壁」を取り払うこと。

「壁」には、「高齢」「障害」「貧困」「言語」「ジェンダー」「弁護士のイメージ」など様々なものがあります。困っている人に対応する弁護士が不足している現実。そのためにアウトリーチ活動や出張相談などを行っているとのことでした。

司法ソーシャルワークとは何かについて、どんな人がどのような目的でどのような活動をしているのか長谷川弁護士からお話を伺う中で、司法ソーシャルワークについて理解が深まりました。

.東京パブリック法律事務所の活動

次に、飯田弁護士から弁護士法人東京パブリック法律事務所の活動と具体的に取り扱った司法ソーシャルワークの事例についてお話がありました。

(1)最初の都市型公設事務所

東京パブリック法律事務所は、2002年6月に東京弁護士会の支援を受けて設立した最初の都市型公設事務所です。地域の権利擁護の拠点(地域連携)、過疎地へ派遣される新人弁護士の養成など広く公益活動を担い、市民の法的駆け込み寺を目指しているとのことです。

(2)事務所の概要

弁護士24名。専門班、部門別の活動を行い、そのうち国際部門(外国人専門の対応)の弁護士が6名。成年後見制度で法人後見も受けているとのことでした。

(3)地域の権利擁護の拠点

また、地域の権利擁護の拠点としては他士業と協働して「事業と暮らしの相談会」を行ったり、その他の活動として、区役所、福祉事務所での出張相談、講演会の講師、ケース会議への出席、司法ソーシャルワークの勉強会、地域の子どもの学習支援なども行っているとのことでした。

.司法ソーシャルワークの具体的事例

どのように他機関と連携して司法ソーシャルワークを行っているかの事例として、(1)認知症の独居老人の事例、(2)経済的搾取を受けていた知的障害者の事例、(3)刑事事件をきっかけに福祉的支援につながった事例の紹介がありました。

.今後の課題

最後に、長谷川弁護士から司法ソーシャルワークについての今後の課題についてお話がありました。

(1)「困りごとの本質」を解決する

「アクセス」できたからといってすべてが改善できたわけではないこと。事例からもいくら破産手続きを行っても「困りごとの本質」を解決に結びつかないと本来の解決には結びつかないこと。司法ソーシャルワークの目的が「司法アクセスの改善」から「困りごとの本質を解決するための協働」へ変化してきていること。

(2)事案を一緒に解決する~弁護士を使いやすくする

弁護士と関係機関との間にはまだ「壁」があり、この「壁」を壊すことが必要。そのためにも事案を一緒に解決していくことで弁護士を使いやすくすることが大事だとの話がありました。

.質疑

質疑の中では、以下のような項目の質疑がありました。

(1)「法テラス」特にスタッフ弁護士の存在が知られていないこと

(2)「法テラス」と「東京パブリック法律事務所」との役割分担(「法テラス」(スタッフ弁護士)では事業者(法人)の相談はできないが「東京パブリック法律事務所」では相談にのっている。「東京パブリック法律事務所」は法人後見を受けているなど)

(3)「法テラス」は全国に散らばっているのでスタッフ弁護士は若くないとできない。(3年を期限としている)

(4)弁護士会との棲み分け



.話を聞いて

今回の話を伺って、これまで抱いていた弁護士のイメージが大きく変わったこと。そして、志のある若手の弁護士の皆さんが司法ソーシャルワークの本質を「困りごとの本質を解決するための協働」であると位置づけ奔走されている姿に感銘を受けました。

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