2018年4月15日日曜日

現代都市政策研究会2018年2月例会感想


首都直下型地震に備える~大都市における災害時要配慮者対策のこれから~」

を聞いて
                                                                                                                                             T.       S. 

今回、跡見学園女子大学観光コミュニティ学部及び(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事の鍵屋先生より被災時の要配慮者対策に関するお話を伺いました。

最初に印象的だったのが、先生の故郷である秋田県のなまはげが、実は、津波から人々を守るためのものであったというものです。秋田県男鹿市は定期的に津波が来る地域ですが、地元の消防団員が扮するなまはげが「怠け者」を探し回る行事の過程で、自然と住民の家族のことを知ることができ、要配慮者の情報が把握できる仕組みになっているのだとか。災害の多い地域の知恵として、伝統行事に防災が活かされているという事例で、とても面白いお話でした。

 さて、今回は、過去の災害時の被害状況、福祉防災計画、自助・共助、福祉避難所等の様々なお話を伺わせていただきましたが、その中で私の職務にも関わるものとして、特に興味を持ったお話を2つ挙げさせていただきます。

まず、1つ目が要配慮者名簿の作成です。現在、私は法務の傍らで個人情報保護を所管していますが、要配慮者名簿について記憶に新しいのが、平成25年の災害対策基本法の改正です。これにより、「避難行動要支援者本人の同意を得たうえでの平常時の消防機関及び民生委員等への情報提供」及び「災害発生時の本人の相違の有無に関わらない名簿情報の避難支援等関係者への情報提供」が可能になりました。あくまで「個人情報」という観点から見ると、年々その取扱いがとても厳しくなる中で、この改正によって必要時に個人情報を提供することが可能となったことは、大きな意義があったと思います。

しかし、今回さらに踏み込んで知ったことが、「平常時の情報提供において本人の同意が得られない場合は自治体の条例等に委ねられている」等、まだまだ課題があるということです。とりわけ、市区町村においては、住民の最も根幹となる基本情報(戸籍等)を保有しているという性質があることからか、個人情報保護に対する考え方が特に慎重であると感じています。個人情報の提供については、国の法律による仕組みとしてトップダウン的に進めなければ、個々の自治体はなかなか踏み切れないのではないかと今の私は考えています。ただし、住民のプライバシーは保障されるべきものでもあるので、自治体がどこまで住民に踏み込むものなのかは、これからも議論され続ける永遠の課題なのかもしれません。

 2つ目は、介護保険ケアプランへの災害時対応の位置づけについてです。私は3年前まで介護保険課で事業者指導の仕事をしており、ケアプランを見る機会も多かったのですが、当時、ケアプランに災害時対応を位置づけるという発想は全くありませんでした。というのも、ケアプランは基準で定められる必須項目(サービス期間、サービス種別、援助内容等)が多く、国の示す標準様式を使用することになるため、介護サービスを超えたところまで視野が行き届きませんでした。また、ケアマネジャーは利用者宅への訪問、書類作成、そしてサービス担当者会議の開催と多忙なため、基準で決められた以上のことをするのは、なかなかの負担です。とはいえ、ケアプランは要介護者(要支援者)の日常生活の記録であるので、災害時対応についても盛り込むことはとても有効だと思います。

ですから、この点については、行政の方からもある程度の支援をすることが必要であると考えます。そのためには、行政側の防災部門と福祉部門が連携し、それぞれのサービスの流れを捉えた上で、例えば、福祉避難所マップを要介護認定申請時にケアマネジャーにお渡しするとか、ケアマネジャー向けの研修においてケアプランにおける位置づけの方法(特記事項欄の活用等)をレクチャーする等の取組みを行い、少しでもケアマネジャーの負担軽減に努める必要があると思うのです。

 さいごに、今回のお話を聞いて、改めて近い将来起こりうる首都直下型地震の恐ろしさと自分の無知さ及び無防備さを実感しました。災害が発生した場合、思わず避難所に避難してしまいそうですが、収容人数に限りがある中で専門的な支援を必要とする要支援者の優先度を考慮すると、在宅避難を選択することも状況に応じて大事なのだと知りました。また、災害時に誰かの助けになるためには、まず自分とその家族を守る必要もあるので、私もさっそく3日分の水と食料を買い込んだところです。講義終盤に、先生からも日頃のご近所付き合いや良い人間関係が防災には大切だとお話いただきましたが、物資だけでなく、人とのつながりを醸成することが、地震の多い日本社会に求められることなのかもしれません。

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